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特集:「デジタル・ビッグバン」のキーポイント(その2)

2017/12/06

デジタルとは何か

本書の前半特に第二章はデジタル・テクノロジーの基礎知識を平易に説明してあります。

 昨今は毎日のように「デジタル」という言葉が社会に溢れていますが、多くの人がアナログとデジタルの違いについて「良く分からない」と言い、またそれ故に正確な知識を渇望しているといっても過言ではないでしょう。

しかし、デジタルの本質は極めてシンプルです。それはアナログと対比することでより正確に理解できるのです。

  上の絵に示されるように、自然界の現象はすべて連続するエネルギーです。また生物もそういう連続エネルギーがあふれた世界に生きています。ですから人間は連続エネルギーつまりアナログ状態の中で生きているのです。人間の体もすべてアナログ状態を前提として進化してきたわけです。

 

それに対して、連続量を折れ線グラフとか棒グラフのように「近似」して表現したものがデジタル情報です。つまりデジタルとは近似法の一種類とも言えます。「デジタル」は整数を表す「デジット」に由来し、「とびとび」の値を意味します。

上の絵の棒グラフの横方向の間隔を限りなく小さくしてゆくと、棒グラフは連続曲線に近い滑らかな形になってきます。例えば音楽CDでは44.1KHz、つまり一秒間に44千回の間隔で音を記録します。そのくらいの細密な近似になると、人間の耳には自然な音と変わらないように聞こえます。このことは画像でも、自然界の計測値でも同じです。つまり近似の程度がある精密さまで達すると、アナログ連続量をデジタル近似量に置き換えても、実際の利用にはほとんど支障がないということです。そしてその超細密な処理が可能になったのは、コンピュータ技術の進歩、特に半導体の集積化・細密化技術が急速に進化し、処理速度が加速度的に向上したからなのです。

 デジタル情報はすべて数値として表現されます。上の棒グラフも計測時間ごとの数値として表現されます(符号化)。そしてこの符号化の際、人類が有史以来親しんできた10進法ではなく2進法を使用したことが大きなポイントです。2進法ということは1と0の2種類の数値のみですべての情報が表現されます。これこそデジタル技術飛躍のカギを握るキーポイントです。1と0の二つの数値のみを対象とすることで、シンプルな処理回路のため細密集積化が可能となり、また結果的に処理速度も向上したのです。二進法ベースのデジタル化を採用したことが、飛躍的な進歩を生んだのです。

さて20世紀初めから急速な技術革新の結果として登場した電気・電子機器は、基本的にはアナログ特性を前提にしています。つまり情報はあくまで連続値であり、それを処理するための機器、例えばアナログアンプなどを用いてスピーカを鳴らすなどというメカニズムが採用されて来たのです。コンピュータ出現以前は、ラジオもテレビもすべてアナログ機器だったのです。

ところが20世紀末ころから急速な進化を遂げたデジタル技術の出現によって、それまでのアナログ方式の技術はあっという間にデジタル化されてしまいました。その理由はいくつかありますが、何といってもデジタル・データの扱いはアナログに比べ負担が少ないことです。一度デジタル化されたデータは、小型で携帯可能な記憶媒体に保存でき、またインターネット通信によって文字通り地球規模、かつリアルタイムに移動可能です。そして世界中に普及した様々なタイプのコンピュータで処理ができます。これにより数値、テキスト、画像、映像、観測値など多様なデータの流動性が一気に向上したのです。

 現在ではグローバルなプラットホームである、Facebook, YouTube, Netflix, Line, TwitterなどのようなSNSを経由して瞬時に世界のどこからでも、またどこにでも情報を送受信可能です。デジタル・データは地球の距離を驚異的な速度で縮小させたというわけです。

またデジタル・データはアナログ・データに比べて情報の劣化が少ないこともメリットの一つです。音楽レコードやカセットテープは、何回も演奏すると音源が歪んでしまい音質が低下します。しかしデジタルのCDではそういうことは起きないのです。1と0の二進法データは二種類の信号の区別さえできればよいので、オリジナル情報の変質が回避できるわけです。

 ここまでは音のデジタル化を紹介しましたが、画像や動画のデジタル化も同様です。

 

上の絵は画像がどのようにしてデジタル化されるのかを示しています。大まかにいうと、画像全体を細かい部分画像(メッシュ)に分割し(これが標本化)、そのメッシュの赤(R,緑(G,青(B)の三色の特性を数値化して表現します(量子化)。赤、緑、青のそれぞれを1バイト(28乗)つまり256段階に区分すると、三色全体では256の3乗、16,777,216色に諧調化されます。つまり約16.8万色の識別が可能となるわけです。

メッシュの数は解像度という用語で表現されます。ここでもデジタル化とは近似化を意味します。本来無限の光の集まりである画像を、極小のパネルの集合として表現し(メッシュ化)、さらにそのメッシュの色を約16万色の中の1色として近似するのです。最近のPCディスプレイやデジタルテレビの解像度は年々進化を続け、ほぼ自然に近い表現になっています。

映像(動画)のデジタル化は、この静止画像を1秒間に20-30コマ連続させることで動きを表現します。映画のコマ数と同じ発想です。人間の眼が認識できるのは1秒間あたりせいぜい30コマ程度ですから、ダイナミックな映像を自然に「見る」ためにはこの程度の近似でも十分なのです。

いかがでしょう。計測値、音、画像、映像などの本来は連続的なエネルギー情報を、近似的に表現することがデジタルの本質であることを理解していただけたでしょうか。そして近似値の表現に二進法を採用し、すべてのデジタル情報が、1と2の二値のみで表現されるため、コンピュータを用いてこれらのデータを高速処理することが可能になったわけです。

デジタル・テクノロジーの理解のためはこのシンプルな本質をしっかり把握すれば十分です。

 詳しくは「デジタル・ビッグバン “驚異的IT進化のメカニズム”」、第2章をご覧ください。

 

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