新着情報

『ウェブの民、未来へ向かう ”21世紀のメガトレンド・デジタル文化とは何か”』 まえがき抜粋

2019/10/16

21世紀の大激変時代を生きる現代人にとって、デジタル社会の本質を知ることは大変重要です。2019年11月初旬、その希望に応える一冊の本が刊行されます。

「ウェブの民、未来へ向かう 21世紀のメガトレンド・デジタル文化とは何か」は、現代社会の大潮流となったデジタル文化の全体像を平易に解き明かし、ウェブの民となった人々が未来に向かう旅の案内書となるべく執筆されました。その概略をここに紹介します。

著者:中村重郎  ㈱デジタルプラネット代表取締役

刊行:東京図書出版 

定価:¥1,500(税抜き)

2019年11月8日 印刷書籍販売開始(10月末ネット予約開始)、11月末電子書籍販売開始

******************************************************************************

「まえがき」より抜粋

1989年から2019年までの30年間に及んだ平成時代の時間の流れの中で、地球上の人々は未曽有の大変化を目撃しました。それがアナログからデジタルへという、社会パラダイムのコペルニクス的転回です。

では始まったばかりの令和の時代においては、この先、何が起きるのでしょうか。もちろん具体的な事象を細かに予言することは簡単ではありません。しかしマクロなトレンドはかなり正確に見えています。それは、「デジタル社会は、この先の令和の時代を通してさらに加速度的に進化する」ということです。つまり、平成時代に人々を驚かせた以上の速度と、もっと大きなインパクトをもって、社会のデジタル化は広く、深く進展し続けるということであり、それは地球規模の現象となるのは間違いないでしょう。

では、そのような嵐のような時代を生きる私たちは、ただ傍観しているしかないのでしょうか。

もしその嵐に備えるための行動があるとすれば、少しでもこのテクノロジー変化の本質を理解することに尽きます。技術は苦手だという方も多いでしょう。その通り、簡単には現代テクノロジーの細部まで細かく把握することは容易ではなく、またそれは理想だが現実的ではありません。

しかし大事なことは、現代社会を襲うデジタル嵐の本質を少しでも自分の頭で理解することです。嵐はどの方向に向かっているのか、どの地域で、どのような衝撃を与えるのか。そして、そもそも嵐がどのようにして生み出されるのか。そういうことを少しでも理解できているのとまったく想像もできないのとでは、嵐の受け止め方に大きな違いが出てくるはずです。それがデジタル時代を生き抜く大事なポイントなのです。  

本書のゴールは、一般の現代人が、デジタル社会の本質を理解するためのお手伝いをすることです。勿論この本だけですべてを網羅することはできません。しかし、ここだけは押さえておきたいといういくつかのポイントを、なるべくわかりやすく解き明かすことには意義があると思われます。つまり本書のゴールは、現代人にとっての「デジタル社会のガイドブック」となることなのです。

そして、世界に目をやると、エストニアやイギリスのように国家を挙げて社会人向けIT教育に取り組んでいる国もすでに現れています。その詳細は本書の中でも取り上げられています。

 さて、世界を激変させるこの嵐の深層をみてゆくと、そこにはデジタル文化の急速な普及があります。

あらためて平成の30年間にわたる情報テクノロジーの進化を総括してみると、その結果として出現した多様なイノベーションが、世界の人々の生活や思考を激変させ、地球規模の共通文化としてあらゆる場所に浸透していることを実感させられます。それこそがデジタル文化なのです。そして、その文化を共有する人間集団は「ウェブの民」です。

有史以来、地球上に住むすべての人はどこかの国や地域に属してきました。すべての人は国民、市民、村民などと呼ばれるように、物質的領域性にもとづく社会秩序の中に組みまれ生きてきたのです。そしてそのような共同体メンバーに共通する行動様式や思考様式が文化とよばれます。20世紀末まで、世界の多くの領域において地理的条件や民族性などに起因する多様な文化が形成されてきました。また宗教や信仰のように、地理や人種などの物質的条件を超越した精神的な共通文化も太古から存在してします。

しかし21世紀になってから地球に住む人々の中に、過去にはなかった感覚が生まれ始めたのです。デジタルテクノロジーが急速に進化する現代において、人々は自分が属する物理的、地理的共同体、つまり国家や地域とは異なる、新たな居住空間の存在を意識し始めました。それが、(デジタル)ウェブ空間という非物質的な世界です。

物理的な制約から解放された現代の人々は、地球上のどの場所にもネット経由で自由にかつ簡単にアクセスできます。リアルタイムで地球の裏側の現在の映像を見ることも可能です。それがウェブ空間の特徴です。SNSの中では直接会ったことのない人とコミュニケーションをもち、友人となることもできます。そこでは過去に体験したことのない仮想的な共同体が生成されるのです。そしてこの新たな感覚は、既存の地理的、物質的な共同体の概念を拡張し、ウェブの世界を新たな生存空間としてとらえる社会観を生み出しました。

つまり20世紀まで物質的な共同体の構成員にとどまっていた人類は、非物質的な居住圏であるウェブ空間においても行動できることを発見し、その中で生まれる仮想的な共同体のメンバーとしての新しい意識を獲得したのです。

そのようにして物質的空間と非物質的空間の両方を行き来する人々こそが「ウェブの民」にほかならないのです。

2019年の現在、約40憶人の「ウェブの民」が、スマートフォンという携帯型デジタルデバイスを身近におき、それを中心軸とするデジタルライフという行動様式、思考様式に移行しています。それが、21世紀の大潮流(メガトレンド)すなわちデジタル文化の本質です。

図1-1には最新のスマートフォンが提供する7つの主な機能を示します。それらの機能は、xxアプリとして最初からインストールされていたり、または簡単にダウンロードして使用できます。

スマートフォンのこのような統合環境を、スティーブ・ジョブズはデジタル・ハブと呼び、未来社会の人々は生活のありとあらゆる局面において、デジタル・ハブが提供する様々なコンピュータシステムを活用する、デジタルライフに移行すると予言しました。2019年の今日、ジョブズが予測した通りの行動様式が地球上の隅々にまで普及しています。これこそがデジタル文化の実態です。

 デジタル文化の背景には、新たなテクノロジーによって極限まで圧縮された時間と空間があります。距離と時差が存在しないことがウェブ空間の本質です。そのような環境の中でデジタル文化は物質的な行動を情報処理に置き換えます。アマゾンは、過去の消費行動の常識であった、店舗に出かけてほしい商品を探し、代金を払って自宅に持ち帰るという物理的プロセスを、いつでもどこの場所からでも実行可能なネットショッピングという情報処理に置き換えました。そこには時間的、空間的制約は存在しません。

つまり「ウェブの民」はかつて物理的空間でしか成しえなかった行動を、ネットの中で簡単に実行できるようになったのです。いわば物理的実空間とウェブ空間の両方を使い分けながら生活ができるのです。しかもウェブ空間で行動する機会はますます増加しつつあります。それがデジタル文化の実態であり、そしてこの二元的な生活圏を持つことが「ウェブの民」の特徴なのです。

図5-3は、有史以来何世紀もの間、物質を中心とする空間においてローカルで保守的な文化の中で生きてきた人類が、21世紀になってウェブ空間の中の、よりグローバルで革新的なデジタル文化の恩恵に浸り始めたという変化を示しています。

そしてこの新しい流れが、「ウェブの民」となった現代人を未来のどこへ先導するのか、それを明確にすることが重要です。そのためには「デジタル文化」とは何か、またそれがどのようにして生まれたのかを明確に把握することです。そのプロセスの向こうに、「ウェブの民」が向かう未来の姿が見えてくるはずです。

その第一歩として、本書ではまずアナログからデジタルへと技術の様式が移行したことが、21世紀の現代、つまり半世紀前の人にとっての未来の形成にどのような影響を与えたのか考察してみます。

次に、未来が形成される過程を、テクノロジーの進化と文化の相関性という視点から分析します。そのことが、今後の20年、30年先の未来を予測するためのヒントになると思われるからです。

本書の後半では未来を創ってきた組織、企業の具体事例として、米国AT&T社ベル研究所、そしてアップルの軌跡をたどります。また文化の継承という、何世紀にもわたる人類行動様式の変化を、文化の遺伝子:ミームという理論に従って分析し、過去四半世紀のデジタルテクノロジーの出現がミームのデジタル化を加速し、結果として過去の歴史に無かった多様な変異を短期間に出現させたことを分析します。

ミームの変異は斬新な文化を生み出す原動力である一方、人間の遺伝子の中のある種の遺伝情報(ゲノム)を何万年にわたり確実に維持してきたことが、生命の確実な再生を担保しているように、人類の文化においても、変えてはならない大事なミームが存在し、その厳格な伝承こそが社会の永続性を確実にする源泉であることを見ていきます。『変化が激しくなればなるほど、変えてはいけないものの存在が重要になる(デジタル・パラドックス)』

またここ数年、GAFAがもたらした個人情報の独占、既存課税制度の無力化、その結果としての富の集中、デジタル分断など、21世紀になって顕在化し始めた新たな社会的課題を整理します。

そしてビットコインなどの仮想通貨に使用されているブロックチェーン技術が、未来社会の新たなインフラを支える強力で効果的なテクノロジーに進化する可能性などを考察します。

最後の章では、世界に先駆けて未来国家の構築にまい進する、バルト海の小国エストニアの先進事例を紹介し、徐々に未来社会の姿が出現し始めていることを見ていきます。

21世紀を生きる読者諸氏が、本書を通してデジタル文化の本質を把握され、未来を展望するためのヒントを得られることを願っています。

目 次

まえがき

第一章 デジタルライフという生き方                                

第二章 デジタル文化とは何か

第三章 プラットフォームの時代                                         

第四章 デジタルの本質を理解する

第五章 グローバリゼーションとデジタル文化                

第六章 デジタル律とブロックチェーン

第七章 未来を創る                                                                 

第八章 未来社会の課題

第九章 エストニアの挑戦ー未来の国家創りー

 

 

 

*************************

新着情報へ戻る