新着情報

『ウェブの民、未来へ向かう』第五章 【立ち読み用抜粋】

2019/11/28

五章 グローバリゼーションとデジタル文化

グローバリゼーションという新たなトレンド

★グローバリゼーションとデジタル・ビッグバン

★グローバルな経済活動が生活の文化を変えた

人類の文化は、「生活の文化」、「感性の文化」そして「知性の文化」という三つの視点から理解される。ここで文化の領域を図示してみよう。水平方向に「ローカル対グローバル」軸、垂直方向に「保守対革新」軸をとって、三つの文化領域をプロットすると、図5・1のグラフになる。

宗教・芸術・伝統の「感性の文化」は、地域性が強くまた基本的には保守的なものだ。他方、科学技術に代表される「知性の文化」は革新性が強く、また広く世界と交わるグローバル性が特徴である。そして、「生活の文化」は最も領域が広く、ローカルからグローバル、また保守から革新まで、実に多様な特性を備えている。具体的な例を示すと、例えば食文化として、私たち日本人は極めてローカルな納豆や味噌を好むと同時に、イタリア料理、フランス料理、中華料理も楽しんでいる。衣類に関しても同じだ。平成生まれの世代でも、結婚式は角隠し・振袖と紋付き羽織・袴にはじまり、ウエディングドレスとタキシードのお色直しをチョイスする。ローカルとグローバルの和洋折衷だ。

生活の文化は経済と深く結びついている。生活を営むためには、主に経済活動で生み出される商品やサービスが必需品だからだ。そして経済は歴史的に地理的制約を超えようとする特性を持っている。

図5・3には、デジタルライフが生み出した多様な商品・サービスが、さらに北西方向、つまり「グローバル化・革新化」ベクトル方向に生活の文化を拡大させた様子が示してある。

SNSに代表されるプラットフォームという地球規模のデジタル・インフラは、もともとローカルで地域性が強かった生活の文化を、デジタル技術が有するイノベーティブな特徴を活かし、世界的に均質なものに変えてしまった。それがデジタル文化である。極限まで圧縮された時間空間の中で、現代人は政治体制、主義主張、イデオロギーに関係なく同じような生活様式の中で生きている。そのベクトルは更に強力になる。

そしてここで重要なことは、この図の左上の領域はウェブ空間に属するという点だ。図の右下に行けば行くほど物質的な世界になる。先述した通り、現代の「ウェブの民」は、ある時は物質空間で生きつつ、そして別の瞬間にはウェブ空間に移動するのである。したがって、物質空間の中で革新化・グローバル化を進めてきた生活の文化は、デジタルテクノロジーの成熟を機に、一挙にその存在領域をウェブ空間まで拡大し、革新化・グローバル化を加速させていると表現した方が良い。

そしてもう一つの特徴的な現象は、これまで限られた国や地域の中で継承されてきたローカルな文化が、SNSやインスタグラム経由でグローバルに露出された結果、他国の人々にその価値を認められてグローバルな文化に変身するというものだ。図中に示した、日本酒や寿司の海外進出がそのことをよく物語っている。グローバリゼーションの結果として消滅しかけているローカル文化がある一方で、世界の文化として普及し始めたローカル文化も存在する。これも越境現象のひとつだ。

★創造と破壊、デジタル・ディスラプション

★シェアリングエコノミーは資本主義の後継者か

★パラドックス(逆説)の時代

★大国の迷走と小国の躍動 

(注: 当サイトの記事はすべて著作権で保護されています。 ©Digital Planet Inc. 禁無断転載)

新着情報へ戻る