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『ウェブの民、未来へ向かう』第四章 【立ち読み用抜粋】

2019/11/23

第四章 デジタルの本質を理解する

★デジタル・ビッグバンとは何

現代のデジタルテクノロジーの進化は一過性のものではなく、永遠に継続する。つまり、現代人が目撃している現象は、驚異的なIT・デジタル技術の加速度的進化の、「始まりの始まり」なのだ。そのような視点から、筆者はこのユニークなテクノロジー現象を「デジタル・ビックバン」と命名した。

巷間「デジタル革命」という言葉をよく目にする。それはデジタル技術が革命的な変化をもたらすことを表現しようという意図を含んでいる。だが革命という言葉は一過性の事象を表わすにはふさわしいが、継続的な現象の表現としては多少ニュアンスが異なる。そして、現代人が過去四半世紀目撃してきたデジタルテクノロジーの進化に起因する社会の激変は、今後もとどまることなく継続し、そのインパクトはますます増大すると予想される。その視点から、筆者は断続的な「革命」ではなく、連続的な「ビッグバン」という言葉を選んだ。

百数十億年続く宇宙空間の膨張と同じように、デジタルテクノロジーのダイナミックな拡散がこの地球上で発生し、この瞬間も継続している。これがビックバンと命名する理由である。

それは決してとどまる事のない爆発的ダイナミズムである。ハードウェア、ソフトウェアそしてデータが互いに連鎖反応を起こし、地球上で爆発的に氾濫し始め、そして未来に向けて連続する現象なのである。

デジタル・ビッグバンの構造

★デジタル・ビッグバンは複合的な連鎖反応

★アナログとデジタルの違い

★デジタル近似(標本化、量子化、符号化)

★デジタルのメリットとインパクト

★デジタルテクノロジーは汎用技術である

★アナログとデジタルは共存関係

最後にアナログとデジタルの共存性について簡単に触れておく。この二つのテクノロジー様式に関しては、アナログをとるかデジタルをとるかという、二律背反的な関係性として理解している人を見かける。だがそれは正しくない。両者は本来、共存関係にあるはずのものだ。

図4・9には、マイクとスピーカを使った音楽再生のケースについて、デジタルとアナログの関係を図示してある。

この図の左上に示されるように、もともと連続なエネルギー量である音や声は、マイクを使っていったん連続値電気信号として記録され、直ちにAD変換処理によってデジタルデータとして保存される。

その音源データは音楽配信ストリーミングサービスなど経由で地球上に配布される。そして再び音や音楽として再生しようとするとき、音源としてのデジタルデータは、図の右下部のように、スピーカやヘッドフォンによって再びアナログに戻される必要がある。なぜなら生物としての人間の聴覚はアナログ連続現象を前提としているので、人間の耳に届くときは本来の連続エネルギーとしてのアナログ音でなければならないのだ。聴覚だけでなく触覚にせよ視覚にせよ、生物はアナログ環境の中で生きているのである。

その意味では現代のテクノロジーの中で、音や映像や圧力のように、人間と直接関わり合うものはすべて、最終的にはアナログ方式に戻す必要があるのだ。つまりデジタルとは、人間が直接感知しない、中間プロセス処理の中で大きな価値を発揮できるテクノロジーなのである。

要は、デジタルとして近似することで途中の複雑な処理がシンプルに簡略化でき、情報の移動や加工も簡単になるのだが、生身の人間の五感に供される際には、再びアナログ連続量に復元されるのである。だから、デジタルとアナログは排他的な関係にあるのではなく、相互補完的に共存する技術なのだ。

 

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